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「でも私、オンナです」
「判ってるだろうけど、そういうことじゃなくて。俺にとっての女性は、少なくとも生徒の中にはいない」
「……クビになるのが怖いとかじゃなく?」
「うん」
「……1回だけ、でも?」
「粘るね。絶対ないよ。それに、悪いけど……女の人なら、間に合ってる」
女生徒は、言葉の応酬よりも俺の瞳の中を探ろうとしているようだった。
けれど、そう時間がかからないうちにへなへなとその場にへたり込んだ。
「……頑張ったのに、一生分の勇気、使ったのにー……」
ぼろぼろと泣き出したその子が投げ出したリボンを拾い上げると、はだけかけた胸元が隠れるようにスル、と首にかけてやる。
恥ずかしそうに胸の前でそれを片手で押さえると、女生徒はしゃくり上げた。
「ま、間に合ってるって……」
「うん?」
「お付き合いしてる人が、いるってことですか……」
「……うん。ごめんね」
半分本当で、半分嘘だけど。
昼間流華さんを嘘つき扱いしたことをはたと思い出し、こっそり胸の中で懺悔した。
でも、今のは嘘じゃなくて方便だから──というのは都合がよすぎるだろうか。
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