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複雑な気持ちになった、その瞬間。
ノックもなく、ガラッと扉が開いた。
一瞬ギクッとしたが──そこに立っていた人物に、俺はほっと胸を撫で下ろした。
朱音ちゃんと、一色だったから。
が、2人は脇のジッパーを開きっぱなしにして号泣している女生徒を見て目を丸くした。
「何してるの……!」
一色がぽぽぽ……と顔を赤らめ、女生徒を見た。
少し白々しいその驚き方に、ピンときた。この子がいるのが判ってて、開けたな。
妙に機転の利く一色は、女生徒のそばに駆け寄ると、「こんなことしちゃ駄目じゃない!」と恥ずかしそうにしながら叱り始めた。
普通この状況なら、俺が疑われると思うんだけど……。
けれど一色の言葉に女生徒は「すみません」と何度も謝りながらジッパーを上げた。
一色は女生徒の内襟のボタンを留めてやりながら、生徒会長らしく眉をひそめ言い聞かせるように口を開く。
「1年生ね。黙っててあげるから先生に迷惑かけたこと、謝って」
「さ、坂田先生、ごめんなさい……」
「ああ……いや……もうこんなことしたら駄目だよ」
「はい……すみませんでした……」
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