【それを人は運命と呼ぶ。】

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   あとは去年の忘年会のカラオケで見た、アイドルソングの熱唱っぷりがすごかったかな……今年もあの妙な腰のキレとヲタ芸を拝まなければならないのだろうか。  どうでもいい記憶をフラッシュバックさせてしまって、微妙に落ち込んだ。  普段、そういう趣味を周囲に押し付けてくるような気の強さもないから、いいんだけど。  年齢が近いとはいえ、あまり関わりたくないタイプだ。  多分、そういう経験もないみたいだし。経験のあるなしで、人間の価値が決まるとは思ってないけど。  俺みたいなグチャグチャ色々考えすぎな人間には、後藤先生のシンプルさはちょっと羨ましい気もするし。皮肉じゃなくて。 「……早く夜にならないかな」  また他人のことが羨ましくなっている自分に気付いて、俺は溜め息をついた。  今日は中居の家を訪ねて、花屋に寄って斉木に献花して──そうだ、忙しいんだよ。今日は。  それに、8日くらいは心の中をスッキリさせておきたい。  悩みがいっぱい詰まった身体で斉木のところに行ったら、何を言われるか判ったもんじゃない。  斉木はもう声を発することはできないけど、不思議なもので、ヤツが何を言いたいか判る時が必ずある。  今も俺は、斉木の気持ちを求めて8日の行動を繰り返しているのかも知れなかった。 .
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