201人が本棚に入れています
本棚に追加
゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚
「そういえば、昨日さ。芹沢が俺んとこ乗り込んできたんだ」
「朱音ちゃん?」
「そう。愛美のこと、どういうつもりなんだって。頼りないかと思ったけど、けっこう頑張るのな」
「……朱音ちゃんはしっかりした子ですよ。昔から。ただ、義父のトラウマがあるだけだ」
ふうん……と浅海さんは呟くように返事をした。
浅海さんにとっては、一色愛美以外はおそらくどうでもいいのだろう。本当の意味では。
去年の今頃、一色愛美が気になっていると告白された時は、どうしようかと思ったけど。
「まあ、本当に愛美の友達なんだな、と思って。他に相手がいないこと、芹沢にだけは言っておいた」
「それ、何で隠すんです。ちゃんと言い聞かせてやれば、一色だって納得してくれるでしょう」
「馬鹿やろう。俺が、ヤバいんだよ」
「はい?」
「愛美にちょっとは遠慮してもらわないと、俺がヤバいの」
……やっぱり、呆れてものが言えないことの方が多いかも知れない。
「愛美んち、母親ずっといないだろ。夜とかよく電話するけど──寂しそうにしてると、来いよって言いそうになるし」
「相手、高校生ですからね」
「判ってるって。だから俺に女がいるって思わせて、小さくしててもらわないと困るんだよ」
「あなたみたいな人が、なんで教師になったんですか」
浅海さんは子どもみたいに口を尖らせると、何やらぶつぶつ口の中で呟いた後、やたらはっきり宣言した。
「俺だって、高校生のガキなんて興味なかったよ。けど、捕まっちまったものはしょーがないだろ」
その言葉に、クッと小さく笑いが漏れた。
浅海さんは俺が笑っているのを視線だけで咎めると、口唇を尖らせながら運転を続けた。
……そうか、捕まったのか。それなら仕方がない。
.
最初のコメントを投稿しよう!