あの時から、透明なまま。

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   げほ、とまた咳き込んだ。  ちょうど本棚の仕切り板に背骨が当たったらしく、確かに呼吸の回復が遅い。  悔しくて口唇を尖らせながら胸を強めに撫で、2秒おきくらいにしゃっくりのような呼吸を繰り返す。  ビリビリと遠慮なくテープを巻きつけるメグちゃんに、虹原さんは膝から太ももにも巻くよう指示した。  それが終わると、ようやく虹原さんが押さえていた腕にも胴体ごとテープを巻きつける。 「よし、これならもう動けないだろ。ハル、警察呼ぶぞ。いいな?」 「お、お願いします……」  息も絶え絶えに頷くと、虹原さんは携帯を出して警察に連絡し始めた。  すると、メグちゃんはへたり込んでいる朱音ちゃんに駆け寄り、その肩を揺すった。  何度も咳き込みながらその様子を見守っていると、虚ろだった朱音ちゃんの瞳にわずかに光が戻ってくるのが判った。 「……私……」 「朱音、しっかりして。大丈夫?」  よかった、とメグちゃんは朱音ちゃんに抱きついてその背を何度も撫でさする。  それを見つめながら、朱音ちゃんのことが心配になってきた。 .
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