透明だから、抗う。

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  「ほら、ごらん」  すねたような仁志くんの瞳が、そこにあった。  それを見ながら、ムッとする。 「岳ちゃんがどういう人であろうと、仁志くんには関係ないじゃない」  すると。 「ああ、そう」  仁志くんのひどく冷たい声が上から落ちてきた。  驚いて顔を上げる。その手元で、出てきたレシートがビリッと途中で破れた。  昔より数センチ高いところにある仁志くんの瞳が、ちょっと怖い。  すると彼は踵を返し、レジ前から離れる。 「えっ!? あ、あの……」  レジから離れるわけにもいかず仁志くんの背中を見つめていると、彼は奥のマガジンラックの陰で潜んでいる好奇心の塊のところまで行き、そこにしゃがんでいる小石川さん達に声をかけたようだった。  にこやかにぺこりと頭を下げ合う2人を、バイトが半笑いで眺めている。嫌な予感しかしない。  小石川さんは何やらわっはっは、と笑ったかと思うと、仁志くんの肩を親しげにポンポンと叩いた。嫌な予感しかしない。  そうして、小石川さんが何やらせわしなく手を動かすと、仁志くんは納得したように頷き、またうやうやしく頭を垂れる。嫌な予感しかしない。  そうして仁志くんはレジ横の出口まで戻ってくると、あたしを半目で睨みながらべーっと舌を出し、無言で出て行ってしまった。 .
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