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「……!?」
彼の、そんな子どものような仕草を見たのは初めてで、しばらくぽかんとその場に立ち尽くす。
思わずレジから出て、にやにやと笑っている小石川さん達のところまで駆け出した。
「あの人に、何を言ったんですか!」
「いや、オリちゃん何時上がりでどこから帰るのって確認されたんだけど」
「……!? 教えたんですか?」
「うん。だって、オリちゃんの元彼で海棠高校の教師やってる坂田仁志と申します、なんてちゃんと名乗られたし、いいかなと思って」
「……ちょっと……!」
「オリちゃん、彼とリラックスして話してたし、これはもしかしてもしかしたら、なんて」
ねー、と小石川さんとバイトは顔を見合わせて微笑み合った。乙女か。
「やめて下さい! あたし、そういうつもりないですから!」
ふと、小石川さんが真剣な顔をする。
「オリちゃん」
「何ですかっ!」
「僕はね、知ってるんだよ」
「……へ?」
「オリちゃん、何度もお見合い失敗してるんだろう? あちらの方からやってきてくれたんだ。これはチャンスだと思うんだよ。華々しく輝くチャンス」
開いた口が塞がらなかった。
美園さんが見合いについて店に電話を入れてきたことは何度かある。
勤務中は携帯には出られないことを見越しての、彼女のおせっかい。
それをこの小石川さんが取り次いだことも、確かにあった。
でも、その誤解はどこから。
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