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「失敗なんてしてないです! いつもあたしの方からそんな気ないからって……!」
「うんうん、判るよ。そろそろヴァンサンカンなお年頃だし、体面ってあるからね」
ヴァンサンカンなんて死語、どこから。
「だからそうじゃないって……」
「織部さん、もったいないですよ。今の人、超カッケーじゃないですか。あんな掘り出し物とどうして別れちゃったんです? それに教師とか、安定じゃないですか」
「バカ、教職はお前なんかが思ってるより大変なんだぞ。モンペとの抗争とか」
古い人間なのか新しい人間なのかよく判らない小石川さんの言動は置いておくとして。
ふつふつと湧き上がる怒りをどこにぶつけるべきか迷って、そして──。
「もうやだ、ここから逃げたい……」
へなへなと主婦向け雑誌のラックに手をついて、あたしは崩れ落ちた。
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