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「どうなるって言われても、約束できるようなことは何もないんだけど」
「そうでしょ。あたしは物書きの道楽に付き合わされるなんてごめんなの」
「道楽って。そんなつもりじゃないよ。先のことが判らないのはどんな恋愛も同じだろ?」
「そうだけど、少なくともあなたは普通の人じゃない。本気も戯れもあなたは同じじゃないの。そんなものにあたしを巻き込まないで」
あたしの切り返しに、岳ちゃんは一瞬きょとんとして──そして、ハハハと声を上げて笑い出した。腹立たしい。
昔と同じ怒りだ。
兄貴が勝手にあたしをネタにして作品を成立させた時の怒り。
岳ちゃんはひとしきり笑うと、少し離れた場所に立っているおまわりさんを気にしながら溜め息をつく。
そうして落ち着いてから、岳ちゃんは穏やかにささやくような声で話し始めた。
「やっぱ、面白い女……さすが織部克行の妹だな」
「作家の好奇心の被害には、もう遭ってるもの。馬鹿にしないで」
「お気の毒に」
クスクスと笑いながら、岳ちゃんはコツンと足を進める。あたしはもう逃げなかった。
「そうだな──俺、あんたの世界が欲しいのかも知れない」
そばで瞳を覗かれ、その中の誘うような微熱に負けじと見つめ返す。
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