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「でも、道楽じゃないよ。あんたにその価値があるなら……それを確かめることができたなら、俺はあんたを決して手放さない」
「そんな危ない挑発に、あたしが乗ると思ってる?」
「うん、思ってる」
サラリととんでもないことを宣言し、岳ちゃんはそのままあたしの前を通り過ぎて警察署の表玄関へと向かう。
「俺、いつでも本気だもん。あんたが手の中に落ちてくるなら、何でもするよ。待てと言うなら待つし、何も判らなくなるくらいやれと言われたら、そうしてやる」
「やれって……」
岳ちゃんはくるりと振り返ると、舌を出してニッと笑った。
「一晩中舐めてろって言われたら、そうしてやるし」
「……ッ、馬鹿じゃないの……っ!」
「さ、戻るぞ。刑事さんが探してるかもだし」
カーッと、頭に血が上る。
こんなあからさまなことは初めてで、恥ずかしくて悔しくて、口唇を噛み締めた。
……同じ夜に仁志くんと、岳ちゃんと。
そして、何をしたいのかも判らない自分がいて。
色っぽいことなど何もなく穏やかに過ごしていた毎日が壊れていく予感がした。
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