242人が本棚に入れています
本棚に追加
目を丸くして岳ちゃんを見上げていると、佐奈ちゃんが首を傾げる。
「陽香、この人が、例の?」
驚いて、岳ちゃんと佐奈ちゃんを交互に見比べる。
「どうも、例の、虹原岳です」
岳ちゃんはあたしの席の背もたれに両肘をついたまま、佐奈ちゃんに向かってひらひらと手を振った。
「なん、で、ここに」
「なんでって、俺が先にここで打ち合わせしてたの。ハル達が後から来たんだろ」
なら、気付いた時に声をかけてくれればいいのに。
意地の悪い彼は話を全部聞いてから顔を覗かせたというわけか。
かあーっと足元から羞恥心が駆け上がってくるのを感じて、その場で頭を抱えた。
どうしてこう迂闊なんだろう、あたしは……。
.
最初のコメントを投稿しよう!