ささやく声と手。

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   目を丸くして岳ちゃんを見上げていると、佐奈ちゃんが首を傾げる。 「陽香、この人が、例の?」  驚いて、岳ちゃんと佐奈ちゃんを交互に見比べる。 「どうも、例の、虹原岳です」  岳ちゃんはあたしの席の背もたれに両肘をついたまま、佐奈ちゃんに向かってひらひらと手を振った。 「なん、で、ここに」 「なんでって、俺が先にここで打ち合わせしてたの。ハル達が後から来たんだろ」  なら、気付いた時に声をかけてくれればいいのに。  意地の悪い彼は話を全部聞いてから顔を覗かせたというわけか。  かあーっと足元から羞恥心が駆け上がってくるのを感じて、その場で頭を抱えた。  どうしてこう迂闊なんだろう、あたしは……。 .
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