ささやく声と手。

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  「俺で、試してみればいいじゃん」  低く、深い声があたしの中に落ちてくる。 「だ、だめ……」 「俺と、その男と──何が違うのか、ハルに試してみて欲しい」 「やめて、そんなの最低じゃない」 「俺がいいって言ってるんだから。いいんだよ。試して、その上で違うってハルにはっきり言われたら、諦める」 「そういう問題じゃ──っ」  岳ちゃんの腕から全力で逃れようとした瞬間。  捕らえた獲物を逃がすまいとするように、岳ちゃんはあたしのうなじにするりと手を回してきて、がっちりと抱え込む。 「……っ!」  ほとんど奪われるように、口唇を塞がれた。 .
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