242人が本棚に入れています
本棚に追加
゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚
──仁志くんの様子がおかしい。
そう言い出したのは、涼太くんだった。
「何が?」
メグが、眉根を寄せて首を傾げる。
久遠寺さんの目に触れないように、私達は保健室でお昼を取っていた。
佐奈先生に使ってない机をひとつ借りて、私と涼太くんとメグとでそれを囲んでいる。
「何が、って言われると困るんだけど」
涼太くんは朝コンビニで買ったサンドイッチをもぐもぐしながら、ううんと考え込んだ。
「アレだよ。お前らが警察のお世話になった日から」
「あたし達が何か悪さしたみたいな言い方やめてよ」
わざとそう言ったのか、涼太くんはメグの突っ込みにひひっと笑った。
「ちょっと、楽しそうっていうか。幸せそう、とまではいかないけど」
「ああ、それは何となく判るけど……織部さんに再会できたからでしょ?」
すると、黙って聞いていた佐奈先生がクスッと小さい声で笑った。
「会いに行ってるみたいよ。陽香に」
「やっぱり」
涼太くんとメグの声が揃ったのがおかしくて、私も思わずふふっと笑ってしまう。
「でもさ、それだけじゃなくて。この前も声かけようとしたらさ」
「何よ」
「渡り廊下から、屋上じーっと睨んでて。何か声かけづらくて黙って見てたら、めっちゃでっかい溜め息ついて。そのまま煙草咥えようとするから、慌てて止めたわ」
「ええ、ヤバッ」
「“悪い、ぼーっとしてた”って笑ってたけど」
「彼がそんな迂闊なことするなんて、珍しいわね」
佐奈先生の感想に、3人でうんと頷いた。
「それだけじゃないっつーか。楽しそうにしてる反面、なーんか考え込むことも増えてる、っつーか。そういう時は恋わずらいっていう雰囲気じゃないっつーか」
涼太くんの言葉を聞きながら、私は昨日の仁志くんを思い返した。
私の話を聞く、っていう態勢を取ってくれていたからか、涼太くんの言うようなことは何も感じなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!