引き続き、彼の観察。

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   織部さんの話を振った時の動揺は、ちょっと可愛かったけど……。  私がお弁当箱を片付けながらぼんやりと考え込んでいると、保健室の扉がガラッと開かれる。 「お、いたいた」  浅海先生だ。  浅海先生はメグを見つけるなり、はあっと溜め息をついて中に入ってくる。 「お前、どこに雲隠れしてんのかと思ったよ。ここんとこ、放送部室の前にいないから」 「だって、あそこもう寒いもん」  浅海先生の“雲隠れ”という言葉を気にしてか、メグは俯いてしまった。 「浅海先生、どうしたんですか?」  私が代わりに訊ねると、浅海先生はがりがりと後頭部を掻きながら机の前に立った。 「久遠寺が、しつこくてな」  浅海先生が言いにくそうにそう言うと、メグは机の脚をコンと軽く蹴る。 「……だから、逃げてきたんじゃん。ここに」  メグの言葉の意味が判らなくて、私と涼太くんは顔を見合わせた。  確かに、久遠寺さんの来なさそうなところでごはん食べたい、って言い出したのはメグだけど……。  メグはぎゅっと口唇を噛みしめた。 「あの女、何なの。あたしがこの学校で楽しそうにしてるのが気に入らないって、たったそれだけの理由でわざわざやって来てさ」  メグは膝の上のハンバーガーの残りを、包み紙ごとぎゅっと握り締めてしまう。 「……メグ?」  そのままメグは立ち上がると、ハンバーガーの残りをゴミ箱の中に投げ捨てた。 「あたしが愛人の娘なら、あの女は何なのよ! 何の権利があって、あたしにあんな……!」 「め、メグ……!?」  メグは浅海先生をキッと見上げると、いきなりはらはらと泣き出した。 「……あ、あの女、知ってるんだもん……あさみんとあたしのこと、知っててここに来たんだ……」 「ええ!?」  驚いた声を出したのは、涼太くんと佐奈先生。  私も、声も出せない程驚いた。 「……愛美」  浅海先生が、メグに向かってそっと手を伸ばす。  メグはその手から逃れるようにそっと身を引いた。 .
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