引き続き、彼の観察。

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  “あさみん”って親しげな呼び方をしている方が、メグにはポーズなんだろうな、ってこと。  だって、前に化学準備室で2人が抱き合ってるのを見てしまった時──メグは夢中で「先生……」って繰り返し呼んでた。  メグは、本当に浅海先生が好きなんだ。  先生としても慕ってるし、男の人としても──。  だけど、それを全部あからさまにしていたら、メグが浅海先生を本気で好きなこと──2人の関係まで、周りに悟られてしまうかも知れないから。  だから、慕っていないふりをしてからかうように呼ぶんだろう。“あさみん”って。  そんなメグの気持ちがいじらしくて、胸が締め付けられる。 「どうして」  たまらず私はメグの肩に手を置く。 「どうして、やめるなんて言うの。久遠寺さんに、何か言われたの?」  責める口調になってしまわないように、ゆっくり言った。  するとメグは顔を上げられないのか、そのままかぶりを振る。 「そのトシでもう大人の男たらしこんで、って。いやらしいって。あんたも母親と同じじゃないって──菜々子、あたしにそう言った……」 「ひどい」 .
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