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「なんで、なんで浅海先生なの……他には、何にもいらないのに。なんで、よりによって浅海先生をあたしから取り上げようとするの……」
「……」
メグの言葉に、ぎゅっと胸が締め付けられそうになる。
私だってもしメグの立場なら、同じことを言うだろう。どうして“彼”なの──って。
よく知りもしないきょうだいに憎まれること自体、どう受け止めたらいいか判らないのに……大好きな人を取り上げる、なんて言われたら。
それでも平常心でいろだなんて、無理な話じゃないか。
「……メグ、浅海先生に話そうよ」
「駄目……」
「どうして。メグひとりで結論出しちゃ駄目だよ……」
「浅海先生に言ったら、じゃあもうお前いいやって、絶対言われる……そんなこと言われたら、生きていけない」
「言わないよ」
「なんで朱音にそんなことが判るのよ! 何も知らないくせに!」
「それは……」
私が言葉を失って俯くと、メグはハッとして顔をそらした。
「……ごめん」
鼻をすすりながら、メグもその場で俯く。
「……優しいけど、いつも線を引かれるの。ここからこっちには入ってくるなって。会ってくれるし、抱きしめてくれるけど。いつもじゃない。時間になったらどんなに粘っても帰されるし、部屋も教えてくれないし」
「……」
「電話も、あたしからは駄目。この間は非常時だったから見逃してくれたけど……」
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