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……メグ、それは……。
思わず浅海先生の真意を口にしたくなってしまう。
だけど、浅海先生の気持ちも判るような気がして──私は、迷った。
私にとっては、浅海先生よりもメグが大事だ。
だけど、浅海先生だってメグを大事に思っているし、きっと私達では想像も及ばない責任まで背負ってる。
ここでメグに全部話してしまって、浅海先生が守ろうとしているものを壊すなんて、私がしてしまっていいのだろうか──。
仁志くんに対して行き過ぎた無粋な行動が過ぎたという反省もあって、二の足を踏んでしまう。
話してしまうのは簡単だけど。
迷っていると、近くでカサリと音がした。
誰もいないと思っていたから、私とメグは一瞬その場でビクッと固まる。
この時間、体育館では授業がないようだけど……。
2人で顔を見合わせ、じっと耳をそばだてる。
「……今すぐに、やめろ。今なら見逃してやる」
聞き覚えのある声に、私とメグはハッと息を呑んだ。
抑えて話しているけれど、怒りを含んだその声は仁志くんのもので、彼は電話をしているようだった。
音を立てないように、メグと2人で四つんばいになりじりじりと壁際をそって進んでいく。
すると、角の向こう側からガサリと枯れ草を踏みしめる音がした。
その足音がどうにも苛立っていて、明らかに声をかけてはいけない雰囲気だ。
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