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「ふざけるな。うちの生徒は関係ないだろう。……彼女もだ」
仁志くんのその声の中には、苛立ちと緊張感が混ざり合っていた。
「……うちの生徒? 彼女……? 何のこと……」
さっきまで泣いていたメグは、目の周りを擦りながら眉根を寄せた。
すぐそばで、体育館の壁を蹴るような音がした。
その音の思わぬ大きさに驚いて、私とメグは慌てて壁に張り付く。
気配を消すのが精一杯で、それ以上先に進めない。
メグと顔を見合わせながら、呼吸する音まで気を遣って、ゆっくりと深呼吸をする。
ややあって、今まで聴いたことのないような低い声が、渇いた冷たい風の中に混じった。
「彼女に何かあったら、俺がお前を殺す」
──……!
ガチガチに身体が固まった。
仁志くんの溜め息と共に、携帯をパチンと閉じる音がして──カサカサと足音が遠ざかっていくのが判った。
やがてその足音も聞こえなくなって、私とメグはへなへなとその場に座り込む。
「あ、朱音……今の」
「うん……」
「仁志くん、よね……?」
何となく声が出せなくて、黙ったまま頷いた。
すると、メグは「信じられない……」と一言呟いたきり、溜め息をこぼす。
メグが自分のことも忘れ、そんな感想を漏らすのも、無理はなかった。
……だって、きっと今の声を聞いた私達にしか判らないだろうけど……。
『彼女に何かあったら、俺がお前を殺す』
そう言った仁志くんの声は、本気だったから。
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