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「同じことじゃない。流されるだけの女の子なら陽香、とっくに今までお見合いで出会った誰かと一緒になってるはずだけど。……知ってるのよ、あたし」
佐奈ちゃんの含み笑いに、背中の辺りに寒いものが走るのを感じた。
「断ったお見合い相手の中に、しつこく食い下がってきた男、いたでしょ。2人程」
「……っ!」
ぬるいを通り越して冷たくなりそうなレモンティーに口をつけていたあたしは、思わず吹き出しそうになってしまた。
「な、なんでそんな……」
「やっぱりね。あたしと会ってる時に何度か電話かかってきたじゃない。ばっちり聞いてたんだから」
「盗み聞きとか、最低なんですけど」
「だって、聞こえたんだもの。陽香の困ってる声」
クスクスと笑いながら、佐奈ちゃんは椅子に身体を預けた。
「3ヶ月くらい、定期的に連絡してくるしつこいのもいたわね。お見合い以来、一度も応じなかったんでしょ?」
「……だって」
「うん?」
「ブランドの、ペアリングしてたんだもの。あの人。あたしが気付かないと思ってたんだろうけど」
「何それ、最悪」
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