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「他にもいい相手がいる心配をしたわけじゃないよ。ただつけてるのが習慣になってるだけで、別れてるかも知れないし……でも、新しい人と会うのに、そういうのを外してくる、っていう気遣いのできない人、あたしはやだ」
「確かに。それはそいつが礼儀知らずなだけだから、正解。でも別に、そのことがなくても断ってきたでしょ?」
「うん」
「ほーら、ごらんなさい。陽香にその気がないのなら、仁志くんがいくら煙に巻こうとしても意味がない、ってこと。いいから、話してくればいいじゃない。何ならアドレス教えてあげるから」
「い、いいよ、そんなの……」
「どうして」
「教えてもらったからって、あたしから連絡なんて……」
「判った。じゃあ仁志くんの方からマメに行くように言っておくね」
「ちょっと! そういう意味じゃ……」
「なるほどねー」
妙な流れになってきて、慌て出したあたしの頭上から、低い声が落ちてきた。
この声は……と顔を上げると、この寒いのにアイスコーヒーをストローでズズズ……と吸い上げる岳ちゃんが顔を覗かせていた。
「……岳ちゃん!?」
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