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「終わったら。終わったら、ちゃんと言うよ。だから……」
仁志くんは少し腰をかがめると、あたしの手を取りそこに頬ずりするように顔を寄せた。
「陽香の気持ちがほどけるまで、頑張るから。その間ずっと俺のこと、嫌ってもいいから……見捨てないで」
まるで捨てられた仔犬のような目をして、仁志くんはあたしに懇願する。
その目を見て、また泣きそうになった。
じゃあ、嘘じゃないって、信じさせて。そう言って彼に抱きつきたい気持ちを堪え、あたしは口唇を噛みしめながら仁志くんから目をそらす。
仁志くんが、ふっと満足そうに笑いを漏らしたのが判った。
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