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でも、あの時飛んできた血の温度や感触は、真ん前にいた俺しか知らないことだ。
このまま弘毅に追い詰められれば、俺もいずれああなるんだろうか。冗談じゃない。
俺は、生きていたいんだ。
だからずっと、痛みに耐えてきた。
陽香まで手放して、7年もずっと。それを今さら覆そうだなんて、冗談じゃない。
俺は生まれてきてはいけなかった人間なのかも知れないと、思春期の頃は何度も思った。
文子が何を思って俺を産んだのか、もう訊くことはできないけれど、俺はこうしてここで生きている。
生まれてきたことが間違いだったのだとしても、俺はもう自分のしたいことを見つけてしまった。
もうこれ以上、自分を譲りたくない。それが、誰であろうとも。
“そろそろハルたん連れてそっちに出るよ”と浅海さんからメールが来て、俺はふっと気付いた。
……今夜、一緒にいてくれないだろうか。
この間、じっくり陽香を抱いた記憶が甦ってきて、鳥肌が立った。
チカンに襲われた日に、そこまでさせて欲しいとは思ってない。
けど、ただ一緒にいて欲しい。
やりきれない冬の夜は、本当に苦手だったから。
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