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授業中とはいえ、校内をうろうろしている先生はいるものだ。
そういう先生達の目に留まらないように仁志くんを追うのは、至難の技だった。
トイレに隠れ、昇降口に逃げ込み──長身の白衣の背を追う。
隠れようとした場所にまた別の先生がやってきそうになったりして、まるで逃亡者の気分。
メグも私も生徒会にいるもんだから、先生全員に顔を覚えられていて、見つかったら一発だ。
階段の踊り場に潜みつつ、メグは窓の外を見ながら小さな声で呟く。
「外、曇ってきたね。朝の天気予報で、今日はずっと晴れてるって言ってたのに」
秋が深まって、真冬が加速度をつけてやってくる。
こういう季節と季節の狭間は、天気が崩れやすい。天気予報が外れる日なんて、そう珍しいことじゃないけど……。
昨夜だって雨が降っていたのに、仁志くんもメグも大変な思いをしているこういう日に、また黒い雲が伸びてくることはないじゃないか、と思う。
しーんと静まり返った校内は、授業中で他の生徒達が教室に押し込められているだけなのに、まるで異空間のようだ。
「朱音」
廊下を歩く先生が通り過ぎたらしく、メグが私の制服の袖を引いた。
仁志くんが向かっているのは多分、体育教官室。浅海先生のところ?
私がそう思った瞬間、真上からクスクスと声を殺した笑いが落ちてきた。
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