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声を荒げてから、浅海先生はいてて……と身体を丸めた。
仁志くんは眉根を寄せ、浅海先生を覗き込む。
「浅海さん、どこが痛む? 判る?」
「多分、肋骨……」
ふうと息をつきながら、浅海先生は安心したように仁志くんを見上げた。
「……ここのところ、俺、通報してばっかり」
強がるようにそう切なく笑って、仁志くんは携帯を開いた。
救急車を呼ぶようだ。すると、浅海先生がその手を掴んで引き止める。
「浅海さん?」
「待て……オオゴトに、すんな。俺は突き落とされたわけでもないし、愛美の妹だ……あの女に話を聞いてからでも、遅くない」
「何言ってんの!?」
メグが泣きながら、浅海先生の手を掴んだ。
「あの子、あたしのこと死んでもいいって思ってた。投げ出された時、視界がゆっくりになって……その瞬間見えたあの子の目がそう言ってた……怖かった」
「それでも」
浅海先生は息を切らしながら、メグの髪をそっと撫でた。
「お前の父親の、もうひとりの娘なんだ。話せば判るかも知れない。久遠寺はそれを求めてここに来たのかも知れない……」
「……浅海さん。久遠寺に何か言われた……?」
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