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更に遠くからの足音が聞こえてきて、仁志くんはそれを気にしながら浅海先生に問いかける。
すると、浅海先生は黙ってかぶりを振った。
「何も。ただ、出会った頃の俺を見る愛美と……よく似た目をしてるって、そう思った……」
「……浅海先生……」
浅海先生は、メグを見ながらふっと笑った。
「……肋骨くらいなら、自分で病院に行ける。心配すんな」
「でも……」
「どこも、痛くないか?」
優しげに問いかける浅海先生を見下ろしながら、メグは首を振った。
「痛いよ。胸が、痛いよ……先生……」
「……バーカ。そんなのはお互い様だろ。我慢してろ」
ふっと笑った浅海先生は、仁志くんの手を借りながら何とか胸の下の辺りを押さえて起き上がった。
「浅海先生、授業中のはずなのに、なんで……」
私がぽつんとそう訊くと、浅海先生は青い顔をして立ち上がりながらこちらを見た。
「お前ら、さっきそこの窓辺にいたろ……下から愛美が見えて、つい……」
「校庭から? あ、あたし……?」
メグはきょとんとして、踊り場の窓と浅海先生を見比べる。
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