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「お前がさっき、泣きながら逃げ出すから、気になったんだろーが……ったく、授業ほったらかしたこと、教頭になんて言い訳すりゃいいんだ……」
「これだから、あなたって人は」
肩を竦めて、仁志くんが笑った。
……メグが遠くから一目で浅海先生を見つけられるように、浅海先生も遠くから一目でメグを見つけられるのか……。
そんなこと言ってられる状況じゃないのに、こちらが恥ずかしくなってしまった。
すると、仁志くんはすっと声を低くして浅海先生に顔を寄せる。
「浅海さん、ここ任せていいかな。俺、久遠寺を探さないと……」
「……? あ、ああ……判った……」
仁志くんの放つただならぬ緊張感に、浅海先生は眉根を寄せながらも痛みをこらえて頷く。
そうして頷き合うと、仁志くんは私に向き直った。
「朱音ちゃん、久遠寺どっちに行った……?」
「あ……階段を降りて……」
正面から見た仁志くんの顔がびっくりするくらい怖くて、私は背筋を伸ばす。
「ありがとう」
言い終わるや否や、仁志くんは久遠寺さんを追うためだろう、白衣を翻して階段を駆け下りていった。
すると、ようやく騒ぎを聞きつけたらしい他の先生達がやってきた。
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