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「……て……待って、仁志くん!」
校舎裏でようやく白衣を見つけ、私は息を切らしながら彼に追いついた。
顔を強張らせて私を振り返った仁志くんは、眉根を寄せる。
慌てる仁志くんの邪魔になるかも知れない──そう思いながらも追いかけてきてしまったのは、ほとんど衝動だった。
泣き止もうとするメグと、浅海先生をあの場に残してくるのは後ろ髪を引かれる思いがしたけど、背に腹は変えられなかった。
だって、さっきのひどく冷たい仁志くんの声が頭から離れない。
『彼女に何かあったら、俺がお前を殺す』
駄目だと、思った。
仁志くんには、いつも穏やかに微笑んでいて欲しい。
いつも正しいことを口にしていて欲しい。そして時々“しょうがないな”ってゆるく叱って欲しい。
だから仁志くんには、そんな言葉と感情は似合わない。
誰かを憎んだり、恨んだり──そんなことで、心の中を汚して欲しくない。
仁志くんはいつでも悲しいくらい優しい人だから、織部さんも好きになったはずなんだ。
「朱音ちゃん……戻るんだ。今、久遠寺に関わっちゃいけない」
「仁志くんだって……」
「俺は、彼女に訊きたいことがある。浅海さんのこともだけど──とにかく、もうすぐ5時限目も終わる。戻りなさい」
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