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メグと2人、固まったままお互いの顔を何とか見合わせた。
「……彼女って、織部さんのことかな……」
メグが掠れた声で、ぽつんとそう言った。
え……と声を漏らすと、メグはゴクンと息を呑む。
「普通に考えたら、何かしたら殺す、なんてスラッと言えるのって……大事な人じゃん」
「う、うん」
「織部さんに、何かあったのかな」
「だよ、ね……」
ここのところずっと、仁志くんの周りを嗅ぎ回っていたおかげで、私達は彼の事情にだいぶ明るくなっている、と思う。
仁志くんは、桐谷先生とは別れたって言ってた。
彼が私に向かってはっきりとそう口にした以上、桐谷先生ともめるようなことにはなっていないと思う。
いきなりがさがさと足音を立てながら仁志くんの後を追おうとするメグに気付いて、私は慌てて止める。
「ち、ちょっとメグ!」
「何。仁志くん、行っちゃうよ」
まだ目を腫らしているくせに、少し鬱陶しそうに振り返るメグを見て、あっと思った。
……私の最近の突飛もない行動のルーツは、メグだ。間違いない。
出会った頃からメグはもう一人前の“女”で、自分の欲望、好奇心に忠実だった。
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