曇天の下で。

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   私とメグが見上げると、今の今までいた踊り場に久遠寺さんが佇んでいる。  窓から少し逆光になって表情の細部はよく判らなかった。 『このまま浅海先生と付き合う気なら、マスコミに売ってやるって……学校にバラすなんて生ぬるい真似してやらないって、知り合いの記者に売って、浅海先生も二度と教師なんてできないようにしてやるからって……』  さっきのメグの泣き声を思い出す。  虫も殺さぬような顔をして、ひどい言葉をメグに投げつけた女の子。  そして、私にもメグを悪く言った女の子──。 「坂田先生のこと尾けて、どうするつもり?」  久遠寺さんは悠然と私達を見下ろしながら、抑えた声でそう言った。  目が少し慣れてくる。  久遠寺さんは窓のそばにもたれて、にこっと笑った。上品で、気立てのよさそうな綺麗な笑顔。  私は、この間の木崎さんのことを思い出した。  人は、見た目のままの心を持っているわけじゃない。  どんなにいい人に見えても、どんな苦い毒をその内にはらんでいるか判らないもの──私に聞こえるように陰口を放った彼女から、教わったこと。  久遠寺さんの内に渦巻くものは、多分木崎さんの比じゃない。ただの勘だけど。 「菜々子……」  私の隣で、メグが弱々しい声を発した。  久遠寺さんの存在そのものが、メグを萎縮させるんだろう。  浅海先生とのことを盾に取られていることも、手伝って。 .
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