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「メグ」
私は、後ずさりしたメグの腕を掴んだ。
ハッと私の顔を見たメグに、小さく「しっかりして」とささやく。
メグは不安げに瞳を揺らし、やがてもう一度久遠寺さんを見上げた。
「愛美。先生とのこと、見逃して欲しい?」
「……!?」
「お願いしてくれたら、見逃してあげるわよ」
久遠寺さんが何かを企むように目を細めたのが判った。
立ち尽くすメグの代わりに、私は一歩前に出る。
──ずっと、メグが助けてくれた。
だから、今が私の頑張れるところ──。
「何が、目的なの。久遠寺さん。私の親友に──メグにこれ以上ひどいこと言ったりしたりしたら、許さない」
眉根を寄せ、久遠寺さんを睨みつける。
すると彼女は意外そうに私を見下ろした。
「……意外に気が強いのね。口先でどうにか言いくるめられるような気弱な子、って報告にはあったけど」
久遠寺さんは壁にもたれたまま、苛立ったように上靴の底を一度、ペタンと踊り場の床に打ち付ける。
「役立たず。後で叱っておかなくちゃ」
その可愛らしい顔からは想像もできないような、冷たく惨い声だった。
久遠寺さんは足を交互にペタペタと慣らしながら私を見下ろし、笑うのをやめた。
「私は、愛美と話をしているの。家族の話。他人のあなたには関係ないわ」
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