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「血の繋がりが、何だって言うの。メグとあなたの繋がりは、あなた達のお父さんだけでしょう? 最近まで会ったこともなかったのに、いきなり家族だなんて振りかざさないで」
「キャンキャンうるさい野良猫ね」
久遠寺さんは顔色一つ変えずにさっと上履きを脱ぐと、私の足元にスパンと投げつける。
その動きのあまりの速さに一瞬、身を竦めた。
「野良に躾なんて、無駄かしら。野良は野良らしく、隅っこからおこぼれを待っていればいいのよ」
久遠寺さんは驚いたまま固まる私を見て、優しい笑みを浮かべる。
「それとも、飼ってあげましょうか? 私の飼い猫になるのなら、大事に大事に躾けてあげるわよ」
ぞわっと、全身に鳥肌が立った。
……この人は、私達とは本質的に“違う”。
何が違うと訊かれても、説明はできない。
でも、違う。
私が当たり前に抱く感情を、多分この人は持っていない──そんな気がした。
「愛美」
久遠寺さんは私からメグに視線を移すと、口唇に笑みを残したまま続ける。
「浅海亮を、私にちょうだい。そうしたら、見逃してあげる」
「え……!?」
メグの身体が、ビクンと反応した。
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