曇天の下で。

8/18
前へ
/18ページ
次へ
  「私とあなたとでは、人生の自由度がまるで違うのよ。だから、少しだけ取り替えるの」 「それで、別れろって言うの……!?」 「そう。あなたは母親譲りのいやらしい部分を使って、また新しい人を見つければいいじゃない。だから浅海亮は、私にちょうだい」 「冗談じゃないわ……浅海先生は、そんなんじゃない! あの人は、女を使ったからって……そんなのでどうにかなるような人じゃないのよ!」  メグの声が、階段に響き渡る。  久遠寺さんはうるさそうに目を細めると、上履きが残った方の足をペタン……とまた床に打ちつけた。 「やってみないと、判らないでしょう?」  久遠寺さんはニヤッと笑うと、吐き捨てるように続ける。 「ああ、試してみてからでもいいわ。合わなかったら、困るから。ねえ、じゃあまず浅海亮を貸して。一晩時間をくれれば確認できるわ」 「あんた……!」  カッとなったメグが、踊り場にいる久遠寺さんに向かって走り出した。 「メグッ!」  メグは一気に階段を駆け上がる。  メグを待ち構える久遠寺さんを見て、鳥肌が立った。 .
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

191人が本棚に入れています
本棚に追加