ある少女の悲劇。

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   ごほうびをもらえると判った時の子どもの、つい愛おしくなるような、そんな目で。 「弘毅と一緒にいたいなら、まずきみの家族をどうにかしないと」  口説くように、酔わせるようにささやきながら、俺は今ものすごく悪い顔をしているんだろうな、と思った。  身体に当たる、少女の胸の膨らみ。  やっぱり姉妹で、時々制服の胸元から覗く一色のそれとよく似ていると思った……なんて言ったら、浅海さんにぶん殴られるだろうか。  でも、これは浅海さんの真似をしてるだけだし。  一色を言いくるめて口説き落とした時の、彼の悪そうな横顔。  俺がまだいるっていうのに、化学準備室で始めてしまった彼らが悪い。  おかげで俺は、あれの独特の残り香の換気要員だ。  ……こんなところ、陽香には見せられないな。朱音ちゃんにも。  俺は心の中で苦笑しながら、久遠寺に「どういう段取りなのか、話して」と甘くささやいた。 .
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