ある少女の悲劇。

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  「すぐに会えたのか……?」 「最初は、何だこのクソガキ……って思ってたんじゃない。でも私、何だか妙に彼に惹かれて、何度も何度も会いに行ったの。ただ、彼のあの目が忘れられなくて。昏くて、冷たくて……あの目に睨まれると、ぞくぞくした」 「……小学生の女の子の感情じゃないだろう、それは」  思わずそう言うと、久遠寺は「私もそう思う」と肩を竦める。  時間が気になって、そっと時計を見ると、2時半になっていた。  誰も探しに来ないところを見ると、浅海さん達がうまくごまかしてくれたのだろう。  授業が終わるまで、あと30分……それさえ過ぎれば、自由に動ける。  久遠寺の話に聞き入りながらも、俺は目的を忘れてはいなかった。 「1ヶ月くらい経ってからかな……弘ちゃんが、初めて家に上げてくれた。何のつもりか聞かせろって」 「それは……加賀美さんて人も?」 「ううん。客間には私だけ……弘ちゃん、加賀美さんには玄関のたたきで待て、って。加賀美さんは、何かあったらすぐに悲鳴を上げて呼ぶように、って」 「……」  嫌な予感がして、俺は言葉を飲み込んだ。  まさか、この子は弘毅にも……。  思わず眉をひそめると、久遠寺は俺の下卑た想像を見透かしたかのように笑った。 .
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