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「私、男の人に判ってもらう方法、それしか知らなかったから。弘ちゃんに近付いて、触った──自分から」
「久遠寺……」
「でも、弘ちゃんは駄目なの──私のことを、抱かなかった。というより、抱けなかった……」
久遠寺は、ひどく寂しそうにうなだれる。
弘毅に触れることを恋い焦がれるような熱を、その瞳の奥にはらんで。
久遠寺はそのままストン、と床に降り立った。
「心配、しなくていいって言ったでしょう? 弘ちゃんは織部さんに“何か”するなんて、無理なの」
さっきまで久遠寺の周りに漂っていた妖艶さはどこへやら、彼女はひどく幼い目で俺を見上げる。
「織部さんにそんなことするくらいなら、あの人は本当に壊れるまで私にする。絶対」
「……きみ達は、一体何なんだ……?」
久遠寺の瞳に、とても17歳の少女のものとは思えない絶望が透き通って映る。
俺は──その瞳がかつての自分のものだったような気がして、急にすうっと胸元が冷たくなるのを感じた。
「別に女の人が駄目なんじゃないんだけど……弘ちゃん、駄目なの。だから私のことも、抱けない。一番、抱いて欲しいのに。弘ちゃんだって、私のこと一番欲しいのに」
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