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それくらい、判る。
伊達に色んな女の人と関わって傷付いてきたわけじゃない。
これがもし演技なら、この少女は化け物だ。
俺は意を決して、家庭科室に足を踏み入れる。
すると、久遠寺は嬉しそうにまた笑った。
……彼女が弘毅を愛しているということを悟ったって、ますます謎が増えるばかりだ。
久遠寺と弘毅は、倍ほど年齢が違う。
一体、どこでどうやって知り合ったんだ。
そして、何があってこの少女にこんな感情が芽生えたんだ。
年齢差が恋の障害になるだなんて思ってないけど、あまりにも毛色が違い過ぎる。
弘毅の整った容姿は、本人さえその気になれば女性を釣ることは可能だとは思うけれど。
が、久遠寺もまたそういうものに単純に擦り寄ることはないだろうし。
根拠のないことばかりが頭の中をぐるぐると巡る。
久遠寺はしばらく何かを考え込むような仕草を見せた後、そっと足を組み替えた。
「先生。自分が檻の中で飼われてる──なんて思ったこと、ない?」
「……何だって?」
「どこにも行くことが許されず、自分の意思を持つことも許されず──ただ、そこにいればいい生活、したことある?」
久遠寺の言葉はあまりに抽象的過ぎて、俺は眉根を寄せるだけに留まった。
頷くだけなら、簡単だった。
人間なんだから、生きている間にそういう閉塞感に襲われることはままあると思う。程度の違いはあれど。
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