ある少女の悲劇。

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   久遠寺の穏やかな声はそのままだったが、少女らしい温度が失われていく。 「あの男が、私を壊した。男はこうすれば悦ぶんだよ、って──まだ何も判らなかった私に、教えたの」 「壊した……って……」  久遠寺がその小さな身体から放つ緊張感に、俺の喉がいつの間にかからからに渇いていた。  久遠寺は諦めたような目を俺に向けると、カーテンを離して自分のスカートの太股部分をぎゅっと両手で掴んだ。 「坂田先生も、男の人なら何となく判るでしょう? 悪いことをした女への、お仕置き……」  言いながら、久遠寺はスルスルとスカートを摘んで持ち上げていく。  やばい……と思った瞬間、俺は思わず息を呑んだ。  彼女がその上に何も着けていなかったからた。 「……ね、判る? 私、大人になれないの。これが、長い間、私が壊されてた証拠」  自分で自分を嘲笑うように、久遠寺は言った。  我に返り慌てて目をそらすと、胸元を押さえて息を継ぐ。 .
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