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「……岳ちゃん……!!」
目を丸くして口をぱくぱくとさせると、ガラスの向こうの岳ちゃんはこっちへ来い、と言うように手招きした。
音は遮断されているのか、岳ちゃんが口を動かすけど、何も聞こえない。
困って、ぶんぶんとかぶりを振り、岳ちゃんに手足を見せた。
すると岳ちゃんはいかにも「あー……」と漏らしたような落胆の表情を浮かべ、しばらく部屋の中を目を凝らして見回す。
やがて何か思いついたのか、下を見るようにジャスチャーで訴えてきた。
岳ちゃんが示したところに視線をやると、気絶していた間かけられていた毛布があるだけだ。
「これ?」と毛布を手に取ると、岳ちゃんはそれを頭から被れ、という動作をした。
何をする気なのかと、とりあえず毛布を頭から被ると。
──ガチャン、とひどい破壊音がした。
バラバラと散らばるその音は間違いなくガラスが落ちる音だ。
おそるおそる毛布から顔を覗かせると、岳ちゃんの「よっしゃ」という声が聞こえた。窓は肝心のガラスを失い、窓枠だけになっている。
岳ちゃんはそこから手を差し入れると、いとも簡単に錆びかけた鍵を外し、ガラリと枠を開けた。
開いた窓に足からするりと身体を滑り込ませ、ガラスの破片だらけの床の上に降り立った。
岳ちゃんの靴の下でバキバキと悲鳴を上げるガラスの音に顔をしかめながら、彼を見上げる。
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