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「別に、自虐趣味はないけど。今まで、男のいる女と恋愛を始めることの方が多かったから、気にしてなかったし。ハルもそのうちのひとりかな……なんて思ったりもしたんだけど」
「……」
「けど、あんたをわりと本気でいいなって思ってから、気付いた。あんたは、誰のものにもならない女だ、って」
「……なんで……」
「ひとりを除いて、な」
「……」
やたら核心をついてくるような岳ちゃんの言葉に、きゅっと下唇を軽く噛んだ。
「なんて言うか、あの坂田って男といる時の空気が、明らかに違う。他の誰とも……もちろん、俺とも」
「そんなこと言われたって、判んないよ……」
「じゃあ、前に言ったみたいに──試してみる? 俺と」
「……! や……っ!」
不意にそのまま口唇を落としてきそうな岳ちゃんの気配を察知し、即座に顔を背けた上で彼の顎を手で押し返す。
「……ほらな」
少し情けない声を漏らし、岳ちゃんはくぐもった笑いを漏らした。
「この間は、避けなかったじゃん」
「し、して欲しくて避けなかったんじゃ……!」
「判ってるって。逃げられないように必死だったし、こっちも」
はあ……と肩で息をつきながら、岳ちゃんは非常口案内を見つけ、行き先を変える。
「……俺が中居弘毅を追っかけてる間に、まとまったんだろ。あの男と」
「……」
即答できず、またぎゅっと口唇を結んだ。
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