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そっと立ち上がり、手錠を結んでいるロープの長さを確認しようと、床にそっと足をつけた。
チャリ……と小さな金属音が響いたけど、気にする程じゃない。
“誰も来ませんように……”と思いながらそろそろと抜き足、差し足でベッドから離れる。
「……届かないや」
部屋のドアノブに何とか手が届かないだろうかと頑張ってはみたものの、足を手錠とロープに取られて無理だった。
ちょっと背の高い男の人でも、たぶん届かない。
8畳程のスペースのこの部屋は、部屋と言うよりまるで倉庫みたいだ。
打ちっぱなしのむき出しの壁は、季節のせいか底冷えするような寒さを感じてしまう。
ベッドしかない部屋に放り込まれて、逃げられないようにされて──。
殺すつもりなら、きっとここに連れてきた時点でそうされている。
ひどく楽観的で典型的なミステリー好きの思考だって判ってるけど、下手なことをしない限り、とりあえず命をとられる心配はないんじゃないかと思う。そう思いたい。
ドアの向こうから何か物音が聞こえた気がして、慌ててベッドの上に横になる。
目覚めた時、どっちを向いていたっけ……と思い返した。真っ先に光を感じたことを思い出し、ドア側を向いた。
そうして寝たふりを決め込んだ瞬間、狙い澄ましたようにドアがバン、と開けられる。
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