僕というものをさだめられた日。-Refrain-

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   彼女を彩るピンク色が、黒髪と黒い瞳を完全に引き立てている。  この子がすごく可愛いということを理解しているのは、これを着せた親の方だろう。 「お母さんがさがしてる。わたし、かえらなくちゃ」  はるかちゃんはやたら一生懸命な口調でそう言いながら、ギュッと口唇を結んで俺を見る。  やっぱりあれは母親の声か。随分オロオロと探し回っているのが、響く声から伝わる。 「うん。俺はいいよ。早くお母さんのところ、行ってあげな」 「ひとしくん、明日、またここにきて。明日は雨、やむっていってたから」 「え?」 「明日。もっと、おはなししよう?」 「……うん」  はるかちゃんがぱたぱたと公園の外に向かって駆けていくのがやたら寂しく感じて──子どもながら胸がギュッと痛くなった。  ……というか。はるかちゃんって……。  ぼんやりとその景色を眺めながら、俺は軽く混乱し始めた。  待てよ。本当に俺の記憶なのか?  はるかちゃんは公園の外まで出て行くと、もう一度俺を振り返ってぶんぶんと手を振った。 .
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