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「ばかやろう……しんじまえ!」
──瞬間。
やたら温かい小さな手が、後ろから俺の手を握ってきた。
ギクッとして振り返ると、そこには俺よりもだいぶ小さな女の子がいた。
顔は、よく判らない。
ただ、ピンクの傘にピンクのレインコートにピンクの長靴で、間違いなく女の子だと思っただけだ。
レインコートは女の子には少し大きいらしく、傘の下にいるというのにフードを目深に被っていて、本人も視界が狭いと感じているのか、見づらいようだった。
奇妙な動きでととん、と右によろけてフードをずらす。
傘と俺の手で両手が塞がっているから、手でフードを上げられないのだろう。
その幼児くさい動きに、荒れまくっていた心がふと凪いだ。
俺の手を離せばいいのに、と思ったけど、小さな手は俺の指を3本ぎゅううっと握り締めてくる。
最初は手を握っていたはずなんだけど、女の子の手が小さすぎて、雨で濡れていることもあり、滑っていったようだ。
仕方なく俺は手を伸ばし、フードをパサ……と後ろに流してやる。
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