僕というものをさだめられた日。-Refrain-

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   すると、サラ……と真っすぐで艶やかな黒髪が現れた。  日本人形みたいな、本当に真っすぐの黒髪。  その髪と同じくらい真っ黒で大きな瞳がくりりと動いて、俺を見上げた。  子ども心に、ドキッとする。  女の子にこうして手を握られたりすることは別に珍しくも何ともなかったし、そこに大した意味なんてないことも判っているから、特別に意識することもなかった。  でも、その小さな女の子の透き通った黒い瞳がまるで俺を咎めているようで──何も後ろめたいことなんてないのに、たじろいだ。 「だめだよ」  さくらんぼのように赤い口唇が、ひとつひとつの音を区切るように、そう動いた。 「えっ」  俺はどこに神経をやればいいのか判らなくて、とりあえず黒い瞳とさくらんぼの口唇を交互に見つめる。  ……我ながら、とんでもない早熟なガキだったと思う。 「ばかとか、ひどいこと言っちゃ、だめなんだよ」  きゅっと、さくらんぼの口唇が結ばれて、黒い瞳がうるん……と俺を見上げてきた。 「……はい。ごめんなさい……」  ものすごく、最短で、最小の労力で、俺の中の毒気が一気に押し流された瞬間だった。 .
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