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俺は、この時期には既に自分のことをけっこうやっかいな人間だと自覚していた。
一度へそを曲げたら、いくらなだめてもすかしてもどうにもならないのだと。
普段は聞き分けがいいだけに、両親でさえ手を焼く子どもなのだと。
でも、何だろう。
この幼児くささの抜けない綺麗な女の子には、一言でぴしゃりと諌められてしまった。
さっき身体の中にあった怒りの熱は、どこに行ったんだろう。
急に、身体が冷えてくるのが判った。
ブルッと震えると、女の子は慌てて俺の上にも傘を差しかけた。
いやいや遅いけど、なんて思いながらもその気遣いが何故か嬉しくて、大人しくそこに収まった。
俺だってそう大きい方じゃないけど、女の子は更に小さかった。
俺の中の流れを一瞬で変えてしまったこの女の子が不思議でならなかった。
こんな雨の日に、こんなひとけのない場所にある公園に、こんな小さな子がうろうろしているなんて──普通ないと思うし。
だからこそ俺は、ここまで走ってきたんだし。
その時、遠くから心細そうな大人の女の人の声が響いてきた。
「はるかー。はるかちゃーん」
すると女の子にも聞こえたのか、彼女は「あ」と慌て始めた。
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