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「……はるかちゃん、っていうの?」
「うん。お兄ちゃんは、なにくん?」
……お兄ちゃん……。
その響きに、やたら胸がざわざわした。
多分その呼び方に反応したわけではなくて。
この女の子にそういう存在として認識されたことが、くすぐったかったんだと思う。だって俺、一人っ子だし。
「……俺は、仁志っていうの」
「ひとしくん?」
はるかちゃんは、俺をじっと見ながらもう一度繰り返して、そして──。
ニコッと笑った。
可愛い……。
女の子に対して、そんなふうに感じたのは初めてだった。
いや、何だろう。顔のつくりとか、着ている服とか、雰囲気とか。
そういう感じのことで可愛い子っていうのはいくらでもいる。
だけど、そういう子は“自分が可愛い”ということをしっかり判っている。
そして、当たり前の顔をしてそれを特権のように行使するものだ。
けど、このはるかちゃん、という子はそんなこと何も考えていないし、判ってなどいない。
無防備極まりなく、本当に子どもらしい子ども……という感じで。
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