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「明日。明日だよーっ!」
「わかった。ちゃんと来るから!」
らしくなく満面の笑みでそう返し、びしょ濡れのくせに俺は何だか幸せに満ちていた。
トクトクと、心臓の音が速い。
一瞬冷えかけた身体は、またわずかに温かくなり始めていて。
俺はそれが冷めてしまわないうちに家に帰ろう、と思った。風邪を引いたら大変だ。
風邪を引いて──明日ここへ来れなくなったら、はるかちゃんをがっかりさせてしまう。
今日、人生で1・2を争う程のがっかりを味わった俺は、あの小さな可愛い子にそれを味わわせるのが忍びなかった。
というか、絶対そんなことをしてはいけないって……そう、思ったんだ。
周りには、雨の匂いが満ちていた。
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