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──けれど、次の日。
待っても待っても、小さな彼女は現れなかった。
真冬を告げる木枯らしの中に、昨日の雨の匂いがわずかに混ざっていて、また胸が啼いた。
公園の中央に立ちながら、雨の名残でぬかるんだ土をぐちゃっと蹴り上げてしまいたくなってしまう。
それは小さな女の子が来ないことへの、純粋な失望と怒りだった。
どこの誰かってことをちゃんと訊かなかった自分にも腹が立っていたし。
陽が暮れそうになって、帰らなければならない時間が近付いていることも嫌だった。
そこで好きなだけあの子を待っていたかったのに──帰らなければならない、子どもの自分。
裏切られたと……思いたがっているのに、後ろ髪を引かれる思いで公園を出ながら、「ひとしくん!」という甲高くよく響く声を、まだ期待している自分が健気で、惨めで、たまらなく嫌だった。
ちょっとでもいいよ。一目でも。
ただもう一度あの笑顔を、俺は見たかったんだ。
そうしたら、この退屈で物足りない世界が何か変わるような……そんな気が、していたんだ。
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