僕というものをさだめられた日。-Refrain-

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 「ごめんなさい」  はるかちゃんは、俺が来るなり身体の前で手を揃えてそのまま頭を下げた。  とても幼い子どものものとは思えないその綺麗な動作に、面食らってしまう。  大人だって、こんな綺麗な動作できないと思うんだけど。  俺がびっくりして固まっていると、はるかちゃんはしばらくしてからおそるおそる頭を上げた。 「この間、行けなくてごめんなさい。かぜひいて、おねつ出ちゃって……」 「おねつ?」  訊き返してから、ああ熱のことか、と判った。  そういえば、会って約束したあの日はものすごい雨だったっけ。  俺ははるかちゃんをじっと見つめた。  ……傘にレインコートに、長靴。完全防備だったよな。  それでも風邪を引くって、どれだけ弱っちいんだよ──と他の子相手ならそう言って笑ってやるんだけど。  それでも風邪を引いてしまうくらいこの子は繊細なんだな、と思った。  壊れやすいんだろうな、とか。  だったら大事にしなきゃ駄目じゃないか、とか。  子どもながら、一生懸命そういうことを考えたような気がする。 「……そっか。風邪なら仕方ないね」 .
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