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「ごめんなさい」
はるかちゃんは、俺が来るなり身体の前で手を揃えてそのまま頭を下げた。
とても幼い子どものものとは思えないその綺麗な動作に、面食らってしまう。
大人だって、こんな綺麗な動作できないと思うんだけど。
俺がびっくりして固まっていると、はるかちゃんはしばらくしてからおそるおそる頭を上げた。
「この間、行けなくてごめんなさい。かぜひいて、おねつ出ちゃって……」
「おねつ?」
訊き返してから、ああ熱のことか、と判った。
そういえば、会って約束したあの日はものすごい雨だったっけ。
俺ははるかちゃんをじっと見つめた。
……傘にレインコートに、長靴。完全防備だったよな。
それでも風邪を引くって、どれだけ弱っちいんだよ──と他の子相手ならそう言って笑ってやるんだけど。
それでも風邪を引いてしまうくらいこの子は繊細なんだな、と思った。
壊れやすいんだろうな、とか。
だったら大事にしなきゃ駄目じゃないか、とか。
子どもながら、一生懸命そういうことを考えたような気がする。
「……そっか。風邪なら仕方ないね」
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