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暗い闇の中で、膝をついて泣き出してしまいそうだった。
俺には彼女の存在が必要なんだと──こんなにも示されていたのに。
どうして、気付けずに見過ごしたんだろう。
どうして、忘れてしまっていたのだろう。
初冬の乾いた風がカサカサと落ち葉を運んで、足元を抜けていくこの感じ。
……こんなにも、覚えていたのに。
すると、陽香は戸惑う俺にもう一度「……ごめんね」と呟いた。
自分の「仕方ないね」が“もう許してるよ”ってことだと通じてないのかと思って、俺は一瞬慌てる。
そうして陽香の顔を見ると、何か言いたげにぱくぱくと口を動かしてから、俯いてしまった。
不思議に思って屈んでやると、小さな白い手がすっと伸びてきて、俺の袖口を軽く摘んだ。
「……はるかちゃん?」
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