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それを拾い上げてみんなの前で俺を裁く──公正な教師の役割に、あの女は酔っていた。
大人のくせに、何だこの女、と思った。
俺が母さんの息子だから、見せしめにやってるんだろう。うちの母さんは絶対にこんなこと、しないぞ。
黙りこくって何も言わない俺は、まんまと濡れ衣を着せられたままになった。
先生が隙あらばポケベルを覗いていることを、うちのクラスの生徒の大半は気付いてる。
7・8歳の子どもの冷ややかな視線には気付かないまま、少し興奮気味の女教師は俺の襟首を掴んで無理やり謝らせた。意味不明の茶番劇。
仮に、俺が本当にカンニングをしていたとして──誰に謝ってるんだよ、これ。
終礼が終わった後、俺の友達はみんな駆け寄ってきて、あの嘘つきな女教師を代わりに馬鹿呼ばわりしてくれていた。
みんなが俺をちゃんと判ってくれたのが嬉しかった。
でも、傷付けられた俺のプライドからはまだ血が吹き出しているし、じくじくと痛い。
全然怒りが治まらなくて……降り出した雨の中を走って帰った。
ランドセルを玄関先に投げ捨てると、傘も放り捨ててそのまままた飛び出した。
……こんなに傷付けられて怒り狂ったのに、どうして忘れていたんだろう。
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